概要
嘉瑞工房は、昔ながらの金属活字を使用した活版印刷の会社です。海外の活字鋳造会社から直接輸入した品質の高い欧文活字を多数保有し、端物印刷物を主に制作しています。名刺、レターヘッド、封筒などはもちろんのこと、招待状のような社交用印刷物や、フォーマルなディプロマ(賞状類)なども得意としています。
欧文タイポグラフィのルールにのっとった、海外でも通用する本格的な印刷物を提供しています。もちろん和文印刷にも対応しています。
#印刷物 はあなたの #沈黙の大使 。貴方の代わりに貴方の #魅力 をちゃんと伝えられていますか? #KazuiPress #silentambassador #kazuipress #letterpress #活版印刷 pic.twitter.com/N4qp9u3D8d
— 嘉瑞工房 (@kazui_press) 2016年6月15日
嘉瑞工房は戦前から続く活版印刷工房ですが、大量の印刷物を安価に生産することを目的とした印刷会社ではありません。むしろ、少量でも時間をかけて質の高い印刷物を作ることをモットーとしています。
活版印刷は産業としては衰退してしまいました。日本だけでなく海外でも多くの活版印刷業者が消えていきましたが、嘉瑞工房は今も健在です。コンピュータ組版で便利になった反面、熟練した組版工の技術や知識が伝わらず、組版の質の低下を招いてしまいました。これは海外でも状況は同じようです。そんな今だからこそ、より良い印刷物、質の高い本物のタイポグラフィが求められるようになってきました。嘉瑞工房の存在意義はむしろ高まっているように思えます。
タイポグラフィとは“印刷用の書体を使って、読みやすく美しく文章を並べる”ことです。最も狭義の定義は“活版印刷術”そのものを指します。嘉瑞工房は、タイポグラフィの基本をしっかりとふまえたうえで印刷物を制作しています。
プロフィール
髙岡昌生(有限会社嘉瑞工房 社長)
1957年(昭和32年)7 月21日 東京生まれ
1980年(昭和55年) 國學院大學法学部法律学科 卒業
現在
Member of the Society for the promotion of the Art of Printing, Leipzig.
(ドイツ・ライプチヒ市印刷技術振興協会会員)
ドイツ・モノタイプ社極東顧問
The Royal Society for the encouragement of Arts, Manufactures and Commerce
( RSA 英国王立芸術協会フェロー)
2009年 新宿ものづくりマイスター「技の名匠」認定 東京都新宿区
2010年よりタイポグラフィトークセミナー「ABCでabcを語ろう!TypeTalks」をドイツ、モノタイプ社小林章、宮後優子と共同主催
英国王立技術協会( @theRSAorg )のフェローとして、#欧文組版をしっかり伝えていくのが使命だと思っています #RSA #嘉瑞工房 #英国
Kazui Press / 嘉瑞工房さん(@kazuipress)が投稿した写真 –
著作
『世界の美しい欧文活字見本帳 嘉瑞工房コレクション』グラフィック社刊 2013年
『欧文組版 基礎とマナー』美術出版社刊 2010年
『「印刷雑誌」とその時代』共著 印刷学会出版部 2008年
『印刷博物館誌』共著 凸版印刷 2001年
髙岡重蔵(有限会社嘉瑞工房 相談役)
1921年(大正10年)1月 18日 東京生まれ
現在
The Royal Society for the encouragement of Arts, Manufactures and Commerce
( RSA 英国王立芸術協会フェロー)
著作
『工場必携シリーズ 欧文活字』印刷学会出版部刊 1948年
『欧文活字とタイポグラフィ』共著 印刷学会出版部 1966年
『「印刷雑誌」とその時代』共著 印刷学会出版部 2008年
新装版『欧文活字』烏有書林刊 2010年
『高岡重蔵活版習作集』烏有書林刊 2013年
嘉瑞工房の歴史
嘉瑞工房の歴史は、戦前のアマチュアプリンター井上嘉瑞(よしみつ)の印刷工房から始まります。個人の趣味で始めたものが本格化し、日本郵船社員としての5年間のロンドン生活を通して、活字収集と本場のタイポグラフィの吸収に取り組みました。嘉瑞工房の名称は井上の名前から付けられました。
このころ、ロンドンから日本の欧文印刷物の質の低さを指摘する論文”田舎臭い日本の欧文印刷”を雑誌に発表し、当時の日本の印刷界に大きな刺激を与えています。帰国後も原宿の自宅に工房を持ち活動を続け、いくつもの著作や印刷物を残しました。
戦前の帰国直後からその井上に師事し、戦後、嘉瑞工房を引き継ぐことになるのが髙岡重蔵です。
井上から直接タイポグラフィの指導を受けた唯一の人で、戦争で灰塵に帰した工房を井上とともに復活させました。仕事が多忙となった井上は工房の実務をはなれ髙岡が中心となり、それまでのPrivate Pressから今度は営利目的の印刷工房として活動していくことになります。 そして井上の死後、髙岡が代表取締役となって嘉瑞工房を引き継ぐことになりました。
髙岡重蔵は欧文タイポグラフィに関する著作も多く残しています。また、教育者としても大学や専門学校の教壇に立ち、多くの若者の指導にもつとめてきました。工房にも直接タイポグラフィ好きの人々が集まるようになり、「金曜サロン」と称しここで何人ものデザイナーやアマチュアプリンター達が教えを受けています。
髙岡の長年に渡る活動は、日本国内より海外で評価されることが多く1995年に英国王立芸術教会フェロー(終身会員)の称号を与えられました。
1995年から髙岡重蔵の息子、髙岡昌生が工房の社長に就任し、髙岡重蔵は相談役となりました。髙岡昌生も現在、美術大学の講師やセミナー、講演、ワークショップなどを通じて、欧文タイポグラフィの正しい普及や、企業や団体に欧文組版に関するアドバイスを行っています。
また、1998年から2002年まで、凸版印刷株式会社による印刷博物館の印刷工房「印刷の家」のアドバイザーを、2人でとともにつとめました。
2003年から、長年の友人である欧文書体デザイナー、小林章氏からの推薦を受け、ドイツ・モノタイプ社の極東顧問も務めています。
2005年に父重蔵に続きRSA 英国王立芸術協会フェローに推挙・選出されました。
当社掲載誌・関連誌
『贅の研究』福田和也著 講談社刊
2013年1月31日発行
「第12回 嘉瑞工房」(p.151-159)で当社の事を取り上げていただきました。「セオリー」誌にシリーズ連載されたものをまとめられた本です。(当社は2012年2号に掲載)取り上げていただいたのでと言うわけではありませんが、福田和也さんの筆致は簡潔ですが、こだわりを持ちながら仕事をされている人達を生き生きと描かれています。是非ご一読ください。
『パッケージデザインの教科書』日経デザイン社刊
過去に、私が連載致しました日経デザイン誌の記事の再編集です。
P.150-159
『マイスターが語るデザインの作法 文字×高岡昌生』
項目:バッケージに説得力を与える欧文書体のマナー。スクリプト体1-伝統と格式。2-大文字表記に注意。3-エレガントな組み方のコツ。4-銅版彫刻系あれこれ。です。
『Typography2』誌 グラフィック社編集部
2013年1月25日号
p.63 私が現在行っている「パッケージデザイン会社向けのセミナー」の取材や、第2特集Typetalks質問大会ダイジェス トに、和欧混植の気をつけるべくポイントについてなどに回答しました。読者プレゼントは当社の欧文書体マグネットが付いています。
『相鉄瓦版』 第207号
特集 「本と活字をめぐる冒険」
「温故知新な活版印刷」としてインタビュー記事が掲載。
『TYPOGRAPHY』誌 グラフィック社編集部
2012年5月25日号
p.10-13 VisualTypography 02 「代官山蔦屋書店内スターバックスコーヒーの壁面アートワーク」(デザイナー古平正義さん)に書体選定、組版監修で参加した記事が掲載されています。読者プレゼントは当社のマスキングテープ-Hが付いています。
ジャスティン・ハウズ著 『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』烏有書林刊
2010年12月21日発行
現代サンセリフ書体の源流であり、最もロンドンを感じさせる書体 ジョンストン・サンズ。その書体設計者であるエドワード・ジョンストンの果たした役割、成果の詳細を紹介されています。ちなみの帯書きを当社相談役、高岡重蔵が担当させていただきました。